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目次
弊社の九州産本格椎茸粉を使った研究が、 「Food is Medicine(食は医療)戦略」がテーマの米国栄養学会ジャーナルに掲載されました。
高脂肪食に椎茸粉を5%加えた場合、12週間後の平均体重は、椎茸粉を加えない高脂肪食群よりも約10%低い値でした。さらに体脂肪量も、椎茸粉を加えた群の方が高脂肪食のみの群より約3割少なくなっていました(いずれも Figure.1 の値から概算)。(マウス実験)
【論文タイトル】"Shiitake Mushroom as a Wholefood Supplementation in a Western Diet Modulates the Gut Microbiome, Serotonergic System, and Wnt Signaling to Promote Gut Health in Mice"
西洋型食にホールフード(食品)としての椎茸粉を補給すると、腸内細菌叢・セロトニン系・Wntシグナル伝達を調節し、腸の健康を促進する(マウス実験)
DOI: https://doi.org/10.1016/j.tjnut.2025.09.021 ←論文PDF
※論文本文のMethods項目に、使用した椎茸粉について"supplemented with 5% mushroom powder (SUGIMOTO Co)."と明記されています。
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この研究の革新性は主に以下の3つです。(次ページ以降に詳述)
1) 椎茸エキスではなくて食品としての椎茸粉末で検証している
2)「日本の伝統食材 × 西洋食」という組み合わせは世界中で歓迎される
3)「いつもの食事に椎茸粉を足すだけ」という実行しやすいシンプルさで腸の中で何が起きるかを解明
さらに掲載されているのがThe Journal of Nutrition の「Food as Medicine 特集号」というのがとても素晴らしいです。
Liu博士のご厚意で論文の画像を使用させていただき、この革新的な論文を詳しく解説していきます。
アメリカではここ数年、「薬や手術だけでなく、医療の中に“食の処方”を正式に組み込もう」というFood-Is-Medicineの動きが一気に本格化しています。これは、慢性疾患を予防または管理し、全体的な健康状態を改善することを目的として、医療制度の中に組み込まれた「食」に基づく栄養介入で、FIMと略語も使われます。
2022年のホワイトハウス栄養会議では、2030年までに飢餓と食事由来の慢性疾患を減らす国家戦略が発表され、その柱の一つとして「医療と栄養を統合する」=Food-Is-Medicine的なアプローチが位置づけられました。
"Pillar 2―Expand Medicare and Medicaid beneficiaries’ access to “food is medicine” interventions."
米国保健福祉省(HHS)は、2024年1月に初の「HHS Food Is Medicine Summit」を開催し、多部門の連携強化を進めています。
https://odphp.health.gov/foodismedicine/about-initiative/our-approach-advancing-food-medicine
こうした政策の流れと並行して、世界的に権威ある米国栄養学会もFood is Medicine研究を強く後押ししており、その一つが 2025年11月に発表されたThe Journal of Nutrition のFood as Medicine 特集号です。この特集号に九州産本格椎茸粉を用いた研究論文が掲載されました。
この論文は、高脂肪な西洋食に、日本の伝統食材しいたけを食品粉末として足すと、腸のメカニズムにどのように作用して肥満を軽減するのかを、Food-Is-Medicine時代の文脈の中で示したショーケース的な位置づけと言えます。
※Food-Is-Medicineは政策のスローガンとして使われており、研究分野ではFood as Medicineという語がよく使われています。
この論文が革新的な点は以下の3つです。
1. 椎茸エキスではなくて食品としての椎茸粉末で検証している
多くの研究は、しいたけから取り出した成分エキス(βグルカンなど)だけを使います。
でもこの研究は、市販の九州産本格椎茸粉を、脂肪たっぷりの米国の西洋食に混ぜて、マウスに食べさせています。
つまり、「サプリではなく食品としての椎茸粉を食事に加えるだけで不健康を改善できるのか?」を見に行っているところが新しいです。
2.「日本の伝統食材 × 西洋食」という組み合わせは世界中で歓迎される
もう一つ注目すべきは、研究のベースにあるのが和食ではなく米国の西洋食だということです。脂肪が多く、野菜や食物繊維が少ない食事で、肥満・糖尿病・心血管病などのリスクを高めるとされる食事パターンです。
この問題児のような食事をそのままに、日本の伝統食材であるしいたけを食品粉末として足すことで、体内で起きる効果を検証しているところが素晴らしいです。日本の椎茸粉によって世界中の食文化が健康的に改善される可能性があります。
3.「いつもの食事に椎茸粉を足すだけ」という実行しやすいシンプルさで腸の中で何が起きるかを解明
高脂肪食に椎茸粉を5%加えた場合、12週間後の平均体重は、椎茸粉を加えない高脂肪食群よりも約10%低い値でした。さらに体脂肪量も、椎茸粉を加えた群の方が高脂肪食のみの群より約3割少なくなっていました(いずれも Figure.1 の値から概算)。(マウス実験)
論文の概要では、目的は「高脂肪な西洋食の“質”を高めるFood-Is-Medicine戦略として椎茸粉を使えるかどうか」を明らかにすることで、そのとき、腸内細菌 → セロトニン系 → Wnt/βカテニン経路の連携効果に注目していることが書かれています。
米国農務省の助成金約30万ドルを受けて米国マサチューセッツ大学で研究されました。
研究チーム代表者のLiu博士はアメリカ栄養学会ASNの「がんと食事分科会」の議長を務めた方で、今年ASN栄養学エクセレンスフェローに選出された著名な研究者です。
https://www.umass.edu/public-health-sciences/news/zhenhua-liu-excellence-nutrition-fellow-asn
今回の研究で、食品として椎茸粉を摂取すると、腸内細菌叢と腸のセロトニン系とWnt/β-カテニン経路が整う様子が明らかになり、その結果、高脂肪食を食べても肥満が抑制されることが明らかになりました。(マウス実験)
Googleスカラーで検索すると、日本語の医学論文では、腸のセロトニン系とWnt/β-カテニン経路は次のような分野でよく出てきます。
腸のセロトニン系・・・腸のバリア・免疫・炎症、肥満・エネルギー代謝、機能性腸疾患
Wnt/β-カテニン経路・・・代謝・肥満・糖尿病関連、発がん・腫瘍
食品としての椎茸粉がこれらの分野に作用する可能性が出てきたので、椎茸の健康効果研究が日本でも加速するかもしれません。

背景
西洋型の食事(脂肪が多く、食物繊維や一部の微量栄養素が少ない)は、腸の健康に影響して各種の慢性疾患リスクを高めるとされている。きのこは、こうした不足を補いうる独自の栄養プロファイルを有する食品である。
目的
椎茸を「食品そのもの」として西洋型食に添加したとき、食事の質および腸の健康を改善しうるかを検証することを目的とした。
方法
C57BL/6系雄マウスを12週間、以下の3群(各群 n=12)に割り付けて飼育した。
・LF:低脂肪食(脂肪エネルギー比10%)
・HF:高脂肪食(同45%)
・HFM:高脂肪食+椎茸粉5%
終了時に便・血液・結腸組織を採取し、腸内細菌および分子解析を実施した。
結果
高脂肪食(HF)では体重が増加したが、椎茸粉添加群(HFM)では増加が有意に抑制された(P<0.05)である。HFMでは腸内細菌叢が再構築され、とくにAkkermansia、Lactococcus、Turicibacter などの有益菌が有意に増加した(P<0.01)である。さらに、椎茸は腸のセロトニン系にも好影響を及ぼし(P<0.05)である。加えて、HFMではWnt/β-カテニン経路の過剰活性が低下し、HFで上昇していた下流遺伝子(Cyclin D1、c-Myc、Axin2 など)も減少した(P<0.01)である。
結論
腸のセロトニン系とWnt/β-カテニン経路は腸機能と腸の健康維持に重要である。椎茸を西洋型食に取り入れることは、腸の健康を高め、工業化された食生活に伴う不調の改善に資する「Food is Medicine(食は医療)」の有望な方策となりうると示唆される。
キーワード
腸の健康、腸内細菌、セロトニン系、高脂肪食、椎茸、Wnt/β-カテニン経路
Western型の食事(Western diet, WD)は、腸内細菌叢の構成や代謝機能に強く影響し、その結果として栄養状態・腸の健康・それに関連する慢性疾患とのバランスを乱す。これらのつながりから、腸の健康を改善し慢性疾患のリスクを軽減するためには、食事による介入が重要であることが示されている。そうした介入の中でも、キノコ類はWDに一般的にみられる栄養上の欠点を補う特徴的な栄養プロファイルを持つことから、ホールフードとして注目を集めている。例えばシイタケ(Lentinula edodes)は、多糖類、ポリフェノール、食物繊維、ビタミンD3など、さまざまな微量栄養素や生理活性化合物に富んでいる。
シイタケにはプレバイオティクス効果が報告されており、WDに関連する腸の健康および代謝性疾患に対処するための有望なホールフードアプローチの一部となり得ることが示唆されている。動物モデルでは、高脂肪食によって誘導される肥満に対してシイタケを補給すると、体重増加が抑制されることが示されている。この効果は少なくとも一部は、シイタケが短鎖脂肪酸(short-chain fatty acid, SCFA)および乳酸を産生する腸内細菌を増やす能力によって仲介されていると考えられており、これらの細菌は肥満の軽減に関与するとされている。さらにシイタケは、有益な細菌属の存在量を増加させることで腸内細菌叢の構成そのものを再構築することが観察されている。体重減少に対する別の説明として、キノコ由来のキトサンの存在が挙げられる。この化合物は抗肥満特性をもつ機能性食品成分として提案されている。キノコキトサンは二つの方法で作用すると考えられている。第一に、消化管内で脂肪の消化と吸収を阻害すること、第二に、脂肪細胞(脂肪を蓄える細胞)における脂肪分解(リポリシス)を促進することである。これらの機序により、摂取した餌の量がほぼ同じであっても体重増加が抑えられたという観察結果を説明できる可能性がある。
セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)は、脳で重要な役割を果たす神経伝達物質である。しかしセロトニンの90%以上は腸のエンテロクロマフィン細胞で産生されており、腸機能と腸の健康を維持するうえで決定的な役割を担っている。その合成は、律速酵素であるトリプトファン水酸化酵素1(tryptophan hydroxylase 1, TPH1)によって触媒され、必須アミノ酸であるトリプトファンの食事からの摂取に依存している。興味深いことに、食事パターンの変化は腸内細菌叢の構成を変えることによってセロトニン産生を調節し得る。いくつかの在来の芽胞形成菌は、大腸および血中セロトニン濃度の腸内細菌叢依存的な制御における主要な仲介因子として同定されている。さらにセロトニンは腸内細菌によって調節されるだけでなく、Enterococcus faecalis、Escherichia coli、Rhodospirillum rubrumといった微生物種の増殖に相互的に影響を与えることも示されている。
Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路は、細胞増殖および分化の調節に極めて重要な役割を果たすが、この経路はしばしば異常をきたし、大腸腫瘍形成などの腸疾患に寄与する。これは、腺腫性ポリポーシス(adenomatous polyposis coli, APC)遺伝子に変異をもつApc +/1638Nマウスモデルでよく示されており、このモデルでは食事誘導性肥満の条件下で変化したWntシグナルが腫瘍形成を促進する。近年のエビデンスは、キノコ由来多糖がWntシグナルを含むがん進行に重要な細胞内シグナル経路を調節し得ることを示唆している。例えばキノコ多糖は、SW480細胞においてWntシグナルカスケードに属するβ-カテニンやCyclin D1といった遺伝子の発現を抑制することが示されている。シイタケなどのキノコは、抗炎症作用およびプレバイオティクス作用が報告されている微量栄養素や生理活性化合物を特に豊富に含んでおり、腸の健康調節の有望な候補とされている。さらにキノコは、腸内細菌叢を再構築し、その結果としてSCFAやクエン酸回路(トリカルボン酸回路)中間体などの代謝産物の産生を変化させることができる。これは、Wnt/β-カテニン経路のような重要な経路を調節し、腸の健康を改善し疾病リスクを低減し得る潜在力を強調するものである。
セロトニンとWntシグナルの間には、発生、代謝、神経といったさまざまな文脈において重要な相互作用が存在することが、研究の進展により明らかになってきている。胚発生においてセロトニンはWntシグナルのコンピテンスファクターとして働き、アフリカツメガエル(Xenopus)胚における体軸形成と左右非対称性の破れを可能にする。一方で、腸の内分泌前駆細胞におけるWnt/β-カテニン経路の活性化は、セロトニン産生腺腫を誘導することが示されており、これは特定の細胞系譜においてWntシグナルが腸のセロトニン系に直接影響し得ることを示唆している。これらの知見は、セロトニン系とWnt/β-カテニン経路の間に潜在的な関係が存在し、それが腸機能と腸の健康を維持するうえで極めて重要である可能性を示している。
本研究は、WDの質を高めるホールフードアプローチとしてシイタケ補給を用いる可能性を明らかにするとともに、それが腸内細菌叢をどのように調節し、その結果として腸の健康を改善し得るかを解明することを目的とした。特に、腸のセロトニン系およびWnt/β-カテニン経路に焦点を当てた。これらの知見は、工業化されたライフスタイルに関連する健康状態に対処しつつ腸の健康を高めるための、新たなFood-Is-Medicine(食は医療)戦略の開発に道を開くエビデンスを提供し得る。

この表は、マウスに与えたエサが三つのグループでどう違っていたかをまとめたものです。
グループは次の三つです。
LF:Low-fat diet(低脂肪食)
HF:High-fat diet(高脂肪食)
HFM:High-fat diet with mushroom(高脂肪食+椎茸粉)
それぞれのエサについて、次の四つの項目が書かれています。
それぞれのグループの中身は次のようになっています。
・LF(低脂肪食)
脂肪のエネルギー比は10%。
コーンスターチ+セルロースが5%入り、椎茸粉は0%。
100gあたりのカロリーは384.6 kcal。
・HF(高脂肪食)
脂肪のエネルギー比は45%。
コーンスターチ+セルロースが5%入り、椎茸粉は0%。
100gあたりのカロリーは472.8 kcal。
・HFM(高脂肪食+椎茸粉)
脂肪のエネルギー比は45%で、HFと同じ高脂肪。
コーンスターチ+セルロースは0%。
その代わりに椎茸粉が5%入っている。
100gあたりのカロリーは472.8 kcalで、HFと同じ。
この表からわかる大事なポイントは次の三つです。

Aについて
この図は実験の流れを示しています。マウスを3つのグループに分け、12週間エサを与えました。
LF群は「低脂肪食」で、エネルギーの10%が脂肪、さらにコーンスターチとセルロースを5%含みます。
HF群は「高脂肪食」で、エネルギーの45%が脂肪、コーンスターチとセルロースを5%含みます。
HFM群は「高脂肪食+椎茸粉」で、脂肪の割合はHF群と同じ45%ですが、コーンスターチ+セルロースの5%の代わりに椎茸粉を5%入れています。
どのグループもオスのマウスを12匹ずつ使い、同じ12週間のあいだ観察しました。
Bについて
このグラフは、12週間のあいだの体重の変化を週ごとに追いかけたものです。
一番下の線が低脂肪食のLF群で、体重はゆるやかにしか増えていません。
上の2本が高脂肪食のHF群とHFM群で、どちらも体重が大きく増えますが、椎茸粉入りのHFM群はHF群よりも軽いまま推移しています。
週が進むほど、HF群とHFM群の体重差がはっきりしてくることから、同じ高脂肪食でも椎茸粉を入れると体重の増え方が抑えられたことがわかります。
Cについて
この棒グラフは、12週間後に「何グラム体重が増えたか」を一度に比べたものです。
HF群が最も体重増加が大きく、LF群が一番少ない値です。
HFM群は高脂肪食ではありますが、HF群よりも体重増加が有意に少なくなっています。
グラフの星(*)は統計的な有意差を示します:* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001(星が多いほど偶然では起きにくい差を意味します)。
Dについて
これは各グループのマウスを上から撮った写真です。
左がLF群、真ん中がHFM群、右がHF群です。
見た目からも、HF群のマウスが一番大きく太っており、HFM群はHF群より細く、LF群が最もスリムであることがわかります。
グラフだけでなく、写真でも体格の違いを直感的に示すためのパネルです。
Eについて
この棒グラフは、12週間後に「腸のまわりに付いている脂肪(腸間膜脂肪)」の重さを比べたものです。
LF群では脂肪の重さが少なく、HF群では腸のまわりの脂肪が大きく増えています。
HFM群では、HF群ほどではないものの、腸間膜脂肪の重さが有意に減っており、椎茸粉によって内臓脂肪の増え方が抑えられたことを示しています。
ここでも星印の数が多いほど「差が偶然とは考えにくい」強い差であることを表しています。
Fについて
この棒グラフは「そけい部(足の付け根まわり)の皮下脂肪(白色脂肪組織)」の重さを比べたものです。
傾向はEと同じで、LF群が最も少なく、HF群が最も多い値です。
HFM群はHF群よりも明らかに脂肪の重さが低くなっており、椎茸粉を加えることで、高脂肪食による皮下脂肪の増加も抑えられたことがわかります。
まとめると、Aは実験の条件、BとCは体重の変化、Dは見た目の違い、EとFは内臓脂肪と皮下脂肪の違いを示しており、どれも「同じ高脂肪食でも、椎茸粉を入れると体重と脂肪の増え方が抑えられる」という結論を裏付けるデータになっています。

Aについて
この図は、各グループのマウスの腸内細菌がどのくらい「共通しているか」「違っているか」を示したベン図です。
青が低脂肪食(LF)、赤が高脂肪食(HF)、オレンジが高脂肪食+椎茸粉(HFM)です。
それぞれの円の外側にある大きな数字(LFなら262など)は、そのグループにしかいない細菌の「種類の数」です。円が重なっている部分の数字(177など)は、複数のグループで共通して見つかった細菌の種類の数です。
この図から、高脂肪食にすると腸内細菌の顔ぶれがかなり変わり、LF・HF・HFMそれぞれに「そのグループだけにいる細菌」がたくさんいることがわかります。つまり、食事内容が変わると、腸内細菌のメンバーも大きく入れ替わるというイメージです。
Bについて
ここでは「Richness(リッチネス)」という指標を使って、腸内細菌の「種類の多さ」を比べています。
左のグラフはLFとHFの比較で、LFの方が箱が上にあり、HFの方が下にあります。これは、高脂肪食にすると腸内で見つかる細菌の種類が全体として減ってしまうことを意味します。
右のグラフはHFとHFMの比較です。HFMの方がHFより少し上にあり、星印が付いているので、椎茸粉を加えた高脂肪食では、細菌の「種類の多さ」が高脂肪食だけよりも有意に増えている、つまり一部回復していると解釈できます。
簡単に言うと、「高脂肪食で細菌の種類が減るが、椎茸粉を入れると種類の多さが少し戻る」という結果です。
Cについて
この図は、腸内細菌の「全体的なバランスや構成の違い」をまとめて可視化したグラフです(主座標分析:PCoA)。
それぞれの点が1匹のマウスを表し、青がLF、赤がHF、オレンジがHFMです。
青い点の集まり、赤い点の集まり、オレンジの点の集まりが、位置の違うクラスター(かたまり)を作っているのがわかります。これは、
・低脂肪食のマウスと
・高脂肪食のマウスと
・高脂肪食+椎茸粉のマウスでは、
腸内細菌の「全体のパターン」がはっきり違うことを示しています。
オレンジ(HFM)は赤(HF)とは重ならず、別の位置に集まっているので、椎茸粉を入れると、単なる高脂肪食とは違う腸内細菌の構成に変わっている、ということが読み取れます。
Dについて
ここでは「Shannon多様性指数」という指標を使って、腸内細菌の多様性を比べています。多様性とは、「種類の数」と「それぞれがどれくらいのバランスで存在しているか」の両方をまとめたものだと考えてください。
左のグラフはLFとHFの比較で、LFの方が数値が高く、高脂肪食のHFでは多様性が下がっています。つまり、高脂肪食にすると、細菌の種類が減るだけでなく、一部の細菌に偏ったあまり好ましくない状態になる、ということです。
右のグラフはHFとHFMの比較で、HFMの方がHFより高い値を示しており、星印が付いています。これは、椎茸粉を加えた高脂肪食では、腸内細菌の多様性が有意に高くなり、高脂肪食だけの状態よりもバランスが良くなっていることを意味します。
まとめると、図BとDは「高脂肪食で腸内細菌の多様性が落ちるが、椎茸粉を加えると細菌の種類とバランスが部分的に回復する」ことを示している図、と理解するとよいです。

Aについて
左側のグラフは、「門(phylum)レベル」で見た腸内細菌の割合を、3つのグループ(LF・HF・HFM)ごとに積み上げ棒グラフにしたものです。棒はどれも高さ100%で、その中を色分けして「どのグループの細菌がどれくらいの割合を占めているか」を表しています。高脂肪食のHFでは、ピンク色のFirmicutesというグループの割合が大きくなり、Bacteroidotaなど他のグループが相対的に減っています。一方、高脂肪食+椎茸粉のHFMでは、Firmicutesの偏りがやや小さくなり、低脂肪食のLFに少し近いバランスに戻っていることがわかります。
右側のグラフは、「属(genus)レベル」で見たときの細菌の顔ぶれです。色の種類がとても多く、HFでは特定の色が目立つのに対して、HFMでは別の色(AkkermansiaやTuricibacterなど)が増え、全体の構成がLFに近い方向へ変化していることが示されています。つまり、椎茸粉を加えることで、高脂肪食で崩れた腸内細菌のバランスが部分的に整えられている、というイメージです。
Bについて
ここでは、Akkermansia(アッケルマンシア)、Lactococcus(ラクトコッカス)、Turicibacter(ツリキバクター)という、いくつかの代表的な細菌だけを取り出して、その割合を詳しく比べています。
Akkermansiaのグラフでは、LFではある程度の量がいるのに、HFではほとんどいなくなってしまっています。しかしHFMでは、LFよりもむしろ多いくらいに増えています。Akkermansiaは腸の粘液を上手に利用してバリア機能を保つ「良い働き」をすると言われている菌で、椎茸粉がこの菌を強く増やしたことがわかります。
Lactococcusのグラフでは、HFでこの菌が大きく増えているのに対して、HFMではLFに近い低いレベルに下がっています。高脂肪食特有の増え方を、椎茸粉が抑えた形です。
Turicibacterのグラフでは、LFとHFではあまり目立たないのに、HFMで大きく増えています。Turicibacterも短鎖脂肪酸をつくるなど、腸にとって良い働きをすると考えられている菌です。
グラフの星(*)は統計的な有意差を示します:* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001(星が多いほど偶然では起きにくい差を意味します)。
Cについて
この図は、HFM群(高脂肪食+椎茸粉)の腸内細菌が、「門 → 綱 → 目 → 科」と分類が細かくなっていく流れを、帯の太さで表したサンキー図です。左から右へ、より細かい分類に分かれていく様子が示されています。帯が太いところほど、そのグループに属する菌がたくさんいるということです。
この図を見ると、HFM群ではFirmicutesやVerrucomicrobiotaといったグループの中の、AkkermansiaceaeやLachnospiraceaeなど、短鎖脂肪酸をつくったり、粘液を利用したりすることで腸の健康に関わるとされる「良い働き」の菌の家系が目立っていることがわかります。論文本文では、高脂肪食に椎茸粉を加えることで、このような有用な菌の系統が選択的に増えている、と説明されています。
Dについて
このグラフは、FirmicutesとBacteroidotaという二つの大きな細菌グループの「比率(Firmicutes:Bacteroidota比)」を示しています。多くの研究で、この比が高くなりすぎると肥満や代謝異常と関係しやすいと言われています。
LFではこの比率が低く、HFではぐっと高くなっています。つまり、高脂肪食にするとFirmicutesに偏った状態になることがわかります。一方、HFMでは、この比率がHFよりも明らかに低くなり、LFに近いレベルに戻っています。グラフの上の星印(****)は、この違いが統計的に非常に強い差であることを示しています。
まとめると、図3全体は「椎茸粉を高脂肪食に加えると、腸内細菌の種類やバランスが変わり、肥満と関連が深いとされるFirmicutesの偏りが和らぎ、AkkermansiaやTuricibacterのような良い働きの菌が増える」ことを示している図だと言えます。
主要な腸内細菌の解説
【門レベル(大きなグループ)】
【属レベル(もう少し細かいグループ)】
【ざっくりまとめ】
・「善玉寄り」と考えやすい菌・グループ
Akkermansia
Turicibacter
Bacteroidota(門として)
Actinobacteriota(特にビフィズス菌など)
乳酸菌グループ(Lactobacillus, 一部のLactococcus など)
・「悪玉寄り(増えすぎると困る)」とされやすいもの
Firmicutes が Bacteroidota に比べて極端に多い状態(高F/B比)
Acetatifactor
一部の Clostridium など病原性を持つ菌
・「どちらとも言えず、バランス次第」の代表
Firmicutes 全体
Clostridium 系、Lachnospiraceae など(酪酸産生菌はむしろ善玉)
今回の論文では、
・高脂肪食で
→ F/B比が上がり、Acetatifactor など「好ましくない」菌が増える。
・椎茸粉を入れると
→ Akkermansia や Turicibacter など善玉寄りの菌が増え、
F/B比が下がり、Acetatifactor が減る。
という変化が、「腸内環境がより健康的な方向に動いたサイン」として解釈されています。

Aについて
このグラフは、「どんな細菌が低脂肪食(LF)らしさを示すのか」「どんな細菌が高脂肪食(HF)らしさを示すのか」をまとめたものです。
緑のバーは「LFで多く、HFで少ない細菌」、赤のバーは「HFで多く、LFで少ない細菌」です。バーの長さが長いほど、その細菌がそのグループの特徴になっている、という意味です。
緑側には、Bacteroidota や Verrucomicrobiota という門、Akkermansia や Lachnospiraceae など、これまでの研究で腸のバリア維持や短鎖脂肪酸産生に関わるとされる“良い働き”の菌が多く並んでいます。
一方、赤側には、Firmicutes 系の中でも Erysipelotrichaceae や Acetatifactor、Eubacterium ventriosum group など、高脂肪食で増えやすく、肥満や代謝異常と関連している可能性がある菌が並んでいます。
つまりAは、「低脂肪食では善玉寄りの菌が目立ち、高脂肪食ではそれとは別の、あまり好ましくない菌が目立つ」という構図を、まとめて見せている図です。
Bについて
Bは、今度は「高脂肪食+椎茸粉(HFM)」と「高脂肪食(HF)」を比べたものです。
緑のバーは「HFMで多く、HFで少ない細菌」、赤のバーは「HFで多く、HFMで少ない細菌」です。
緑側には、Akkermansia、Lachnospiraceae、Turicibacter、Lactococcus などが並びます。Akkermansia や Turicibacter は前の図でも“良い働き”が期待される菌として出てきました。つまり、椎茸粉を入れると、こうした善玉寄りの菌がぐっと増えていることを示しています。
一方、赤側には、高脂肪食の特徴だった Erysipelotrichaceae や一部の Firmicutes 系統が残っています。
B全体として、「同じ高脂肪でも、椎茸粉を入れると低脂肪食に近い菌たちが増え、高脂肪食特有の菌が押さえ込まれている」という変化をまとめて示しています。
Cについて
Cは、Aの結果を「系統樹(進化の家系図)」の形で表した図です。真ん中から外側に向かって、門→綱→目→科→属…と細かい分類に分かれていく木が描かれています。
緑色でハイライトされている枝は「LFで多いグループ」、赤色は「HFで多いグループ」です。
この図を見ると、特定の枝だけでなく、木のあちこちで緑と赤が分かれていて、「高脂肪食にすると、腸内細菌の家系図の中のいろいろな場所で、LFとは違うグループが優勢になる」ことが分かります。つまり、単に1~2種類の菌が変わっただけでなく、腸内細菌叢全体の構造が食事によって大きく組み替えられていることを示しています。
Dについて
Dは、Bの結果を同じように系統樹で示した図で、「高脂肪食+椎茸粉(HFM)」と「高脂肪食(HF)」の違いを色分けしています。
ここでは、緑が「HFMで多いグループ」、赤が「HFで多いグループ」です。
木全体を見ると、HFM側の緑の枝がかなり広い範囲に広がっており、Akkermansia など特定の属だけでなく、その周りの家系も含めて多くの系統がHFMで豊かになっていることが分かります。一方、HF特有の赤い枝は限られた部分に集中しています。
Dが伝えているメッセージは、「椎茸粉を加えると、腸内細菌の家系図の中の多くの枝で“LF寄り”の構成に近づき、高脂肪食だけのときとは違う、より望ましいバランスに変わっている」ということです。
まとめると、図4全体は、
・低脂肪食と高脂肪食では、どの菌グループが増えたり減ったりするか
・高脂肪食に椎茸粉を入れると、その流れがどこまで元に戻るか
を、「どの菌がどのくらいそのグループの特徴になっているか」と「菌たちの家系図」の両方から示した図だと考えると分かりやすいと思います。

日本語の医学論文では、腸のセロトニン系は次のような分野でよく出てきます。
腸のセロトニン系・・・腸のバリア・免疫・炎症、肥満・エネルギー代謝、機能性腸疾患
Aについて
Aは「腸のセロトニン系がどうやって腸の細胞に影響を与えるか」を絵で見せた模式図です。
5-HTR1~5-HTR5 というのは、セロトニンを受け取るアンテナ(受容体)です。腸の細胞の表面に並んでいて、セロトニンがくっつくと、中のスイッチ(MAPK/ERK や PI3K/AKT、TGF-β、Wnt/β-catenin など)がオンになります。
このスイッチが長く強く入りすぎると、図の下にあるように、細胞の増え方や死に方のバランスが崩れ、「正常な上皮 → 腺腫(ポリープ)→ がん」という流れを進めてしまう可能性があります。
つまりAは、「腸のセロトニンの信号が強くなり過ぎると、腸の細胞の増殖やがん化にもつながりうるので、ほどよいレベルに保つことが大切」という背景を説明している図です。
Bについて
Bの左のグラフは、血液中のセロトニン量を比べています。
高脂肪食(HF)では、低脂肪食(LF)よりもセロトニンが高くなっています。一方、高脂肪食に椎茸粉を加えたHFMでは、HFよりやや低い方向に戻っています(大きな差ではありませんが、HFほど高くはなっていません)。
右のグラフは、腸でセロトニンを作る酵素Tph1(トリプトファン水酸化酵素1)の遺伝子の働き具合を見たものです。HFではTph1の発現が強くなり、HFMではそれが大きく下がって、LFに近いレベルまで抑えられています。
まとめるとBは、「高脂肪食で腸がセロトニンを作りすぎる方向に傾くが、椎茸粉を入れるとセロトニンを作るスイッチ(Tph1)が弱まり、作りすぎが抑えられる」ことを示しています。
Cについて
Cは、腸内細菌とセロトニン関連の遺伝子(Tph1 や Htr 受容体)の関係を色で示したヒートマップです。
縦軸が細菌のグループ(Akkermansia や Turicibacter など)、横軸がセロトニン関連の遺伝子です。
赤っぽい色は「その菌が多いほど、その遺伝子の働きも強くなる(正の相関)」、青っぽい色は「その菌が多いほど、その遺伝子の働きは弱くなる(負の相関)」という意味です。
論文では、椎茸粉で増えた菌(Akkermansia や Turicibacter など)は、セロトニン受容体の“正常な”発現パターンの回復と一緒に増えており、高脂肪食で特徴的に増えた菌は、セロトニン系の乱れと結びついている、と説明されています。
つまりCは、「腸内細菌の顔ぶれが変わることで、腸のセロトニンの出し方・受け取り方も変わっているらしい」という“つながり”を示す図です。
Dについて
Dは、腸のセロトニン受容体(Htr1d, Htr2a, Htr2b, Htr4)の遺伝子の働き具合を比べたものです。
4つのグラフすべてで、HF群では受容体の発現が強くなり、セロトニンからのメッセージを受け取りすぎている状態になっています。
しかし、HFM群では、その発現がLFの水準にかなり近いところまで戻っています。
これは、「高脂肪食で過剰にオンになっていたセロトニンの“受信機”を、椎茸粉が落ち着いたレベルに戻している」と解釈できます。
Aの模式図と合わせると、Dは「椎茸粉を加えることで、セロトニンの信号が腸の細胞に伝わりすぎないようにブレーキをかけ、腸の動き・分泌・感覚などのバランスを整えている可能性がある」ということを示すデータです。
全体として図5は、高脂肪食で乱れた「腸のセロトニン系」が、椎茸粉によって
・セロトニンを作る量(Tph1)
・セロトニンを受け取る受容体(Htr群)
・それらと結びついた腸内細菌の構成
の三つの面から、より落ち着いた、バランスの良い状態へ近づいていることを示しています。

日本語の医学論文では、Wnt/β-カテニン経路は次のような分野でよく出てきます。
Wnt/β-カテニン経路について・・・代謝・肥満・糖尿病関連、発がん・腫瘍
Aについて
Aは「Wnt/β-カテニン経路」がどんな仕組みかを絵で説明した模式図です。
上の三角形が Wnt という「増えろ」という信号のスイッチで、腸の細胞の表面にある受容体(Frizzled と LRP)にくっつくと、中でスイッチが連鎖的にオンになり、β-カテニンというたんぱく質がたまっていきます。
β-カテニンが細胞の核までたどりつくと、c-Myc や Cyclin D1 など「細胞をどんどん増やす」遺伝子のスイッチを入れてしまいます。
一方で Dkk1 や Sfrp5 といった「Wnt拮抗因子」は、このWntシグナルが強くなり過ぎないようにする“ブレーキ役”です。
つまりAは、「Wntシグナルは腸の細胞を増やす大事な仕組みだが、アクセル(Wnt)とブレーキ(Dkk1やSfrp5)のバランスが崩れると、増え過ぎや腫瘍につながる可能性がある」という全体像を見せている図です。
Bについて
Bは、そのアクセル役とブレーキ役の遺伝子が、3つの食事グループでどう変わったかを棒グラフで示しています。
・Wnt10b
Wnt10b はWntシグナルを強める「アクセル役」です。
低脂肪食(LF)を基準にすると、高脂肪食(HF)ではWnt10bの発現が約2倍くらいに増えています。
しかし、高脂肪食に椎茸粉を加えたHFMでは、この増えすぎたWnt10bがぐっと下がり、LFに近いレベルまで戻っています。
→ 高脂肪食で踏み込まれた「増えろシグナルのアクセル」を、椎茸粉が戻しているイメージです。
・Dkk1
Dkk1 はWntシグナルを止める「ブレーキ役」の1つです。
LFでは1.0を基準とすると、HFでは0.4~0.5程度まで下がり、ブレーキが弱くなっています。
HFMでも完全には戻らず、HFと同じくらい低いままです。
→ 高脂肪食で弱くなったDkk1のブレーキは、椎茸粉では十分には回復していません。
・Sfrp5
Sfrp5 もWntシグナルの「ブレーキ役」です。
LFではやや高め(1.2前後)、HFでは0.8程度に下がりブレーキが弱まっています。
ところがHFMでは1.2~1.3程度にまで上がり、LFと同じかそれ以上に戻っています。
→ 椎茸粉によって、Sfrp5 という別のブレーキはしっかり回復していることがわかります。
まとめると図6Bは、
「高脂肪食では、Wnt10bというアクセルは踏み込みすぎ、Dkk1とSfrp5というブレーキは弱くなっていた。
しかし椎茸粉を加えると、アクセル(Wnt10b)は弱まり、ブレーキの一つ(Sfrp5)はしっかり戻った」
ということを示しており、Wnt/β-カテニン経路の暴走を椎茸粉が落ち着かせている可能性がある、と解釈できます。

Aについて
Aでは、大腸の細胞の中にある「p-GSK-3β」と「β-カテニン」というたんぱく質の量を測っています。どちらもWnt/β-カテニン経路の動き方を知るための指標です。
グラフを見ると、p-GSK-3βの量は、低脂肪食(LF)、高脂肪食(HF)、高脂肪食+椎茸粉(HFM)のあいだでほとんど差がありません。つまり、この部分は食事で大きくは変わりませんでした。
一方、β-カテニンの量は、HF群でぐっと増えていて、LF群よりかなり高くなっています。これは、高脂肪食でWnt/β-カテニンの「増えろシグナル」が強くなっていることを意味します。
ところがHFM群では、この増えていたβ-カテニンが大きく減り、LF群にかなり近いレベルまで下がっています。
まとめると、「高脂肪食でたまりすぎたβ-カテニンを、椎茸粉が元に近い状態まで戻して、Wnt/β-カテニン経路の過剰な活性化を抑えている」と言えます。
Bについて
Bでは、β-カテニンのその先で働く代表的な遺伝子、c-Myc、Cyclin D1、Axin2 の三つを調べています。これらは細胞を増やすスイッチとして知られており、Wnt/β-カテニン経路が強くなるとオンになりやすい遺伝子です。
三つのグラフすべてで、HF群はLF群より発現量が高くなっており、高脂肪食によって「細胞をどんどん増やす方向」のスイッチが押されていることが分かります。
しかしHFM群では、c-Myc も Cyclin D1 も Axin2 も、HF群より明らかに低くなり、LF群に近いレベルまで戻っています。
つまりBは、「高脂肪食でオンになっていた増殖遺伝子のスイッチが、椎茸粉を加えることでオフに近づき、細胞増殖の暴走にブレーキがかかっている」ことを示しています。
Aと合わせると、図7全体として、「椎茸粉は、高脂肪食で強くなりすぎたWnt/β-カテニン経路と、その下流の増殖シグナルを落ち着かせている」というメッセージになります。
グラフの星(*)は統計的な有意差を示します:* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001(星が多いほど偶然では起きにくい差を意味します)。