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しいたけ天日干しの銅像見たことありますか?
この銅像は、禅の教えだけでなく、昔のしいたけ乾燥法の知恵まで伝えてくれる珍しい像です。
真夏の炎天下に干し椎茸を天日干しする老僧と、若き日の道元禅師の対話が、精進料理のバイブル「典座教訓」に載っていて、それを銅像にしたものです。
典座教訓(てんぞきょうくん)には、真夏の灼熱の日差しの下で、敷き詰めた瓦の上に椎茸を並べて天日干しをしている年老いた典座(てんぞ)の話が出てきます。
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ポイントは二つ。 |
真夏に瓦を地面に敷き詰めた上に干し椎茸を並べて天日干しする方法は上下から熱が椎茸に加えられてカラカラに再乾燥できる良いやり方ですね。
椎茸は、もともと春と秋の二つの時期に発生する「二期発生型」のきのこです。典座教訓に描かれた真夏の炎天下での作業は、生しいたけを乾燥して干ししいたけにする場面ではなくて、すでに乾燥させた干し椎茸の乾き具合を保つための天日干しだったと考える方が自然です。
この話は昔話ではなく、実際に現代まで続く乾燥の知恵とも重なります。
昭和5年の椎茸栽培技術書にも高温乾燥が推奨されていますので、このブログでは合わせて古来の乾燥方法について読み解いていきます。

写真は「天童山老典座和尚と若き日の道元禅師像」(東京都新宿区大龍寺)です。

この像の碑文を読みやすく現代文にしてみました。この話はおおよそ800年前の 1223年ごろ と考えるのが自然です。理由は、本文が「二十四歳の時、正法を求めて宋に渡り、天童山に在りし時」としているからです。道元は一般に 1200年生まれ とされるので、単純計算では24歳は 1223~1224年ごろ になります。
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道元禅師が24歳のとき、仏法を求めて宋へ渡り、天童山にいたころの話である。
私が天童山にいたころ、寧波府出身の用典座が典座の役を務めていた。
私は、食事を終えたので、東の廊下を通って超然斎という寮舎へ向かう途中、用典座が仏殿の前でしいたけを干しているのを見た。
典座は手に竹の杖を持ち、頭には笠ひとつかぶっていなかった。
日差しは強く、地面に敷き詰めた瓦も熱かったが、それでも汗を流しながら歩き回り、力をふるってしいたけを干しており、いかにも苦労しているように見えた。
背は弓のように曲がり、眉は鶴のように白かった。
私は近くまで行って、典座の年齢をたずねた。
すると典座は、「六十八歳です」と言った。
私は、「どうして人を使わないのですか」と言った。
すると典座は、「ほかの者は私ではありません」と言った。
私は、「あなたのなさり方はまことに立派です。けれども、今日はこんなに暑いのに、どうしてこんな場所でなさるのですか」と言った。
すると典座は、「今をおいて、いったいいつやるのですか」と言った。
私はそこで口をつぐんだ。
そして廊下を歩きながら、この役目の肝心なところをひそかに悟った。

写真は2008年に撮影した杉本商店の天日干し風景です。現在は安全性の観点から方法を変えています。
瓦ではありませんが、アスファルトの上で真夏の炎天下に行っていました。しっかり上下から熱を加えないと、カラカラに乾かないので、天日干しは真夏にしかできません。
異物混入を避けるために、現在では天候に依存しない遠赤外線乾燥仕上げと紫外線照射に変わりました。
産地では古くから薪や木炭で高温乾燥が行われており、天日干しは消費地で真夏に行われていた手軽な「再乾燥」でした。
詳しくは=> 椎茸の乾燥方法
まだ種駒が発明されていないナタ目栽培の頃、産地では高品質な干し椎茸を作るために、薪や木炭で高温乾燥が行われていました。乾物では水分率がとても重要なのです。
昭和5年に発刊された椎茸栽培手引書「山の光」から、乾燥方法について解説されている部分を現代語訳にしました。
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昭和5年の手引書『山の光』が伝えている要点 |

「山の光」第3節 現代文
第3節 天日乾燥と火力乾燥
一、天日乾燥を避けるべき理由
天日乾燥は、一見すると木炭の使用を節約でき、手間も省けるので、有利な方法のように思われている。しかし、これは大きな誤解である。
椎茸は、菌糸の結晶体が成熟して形になったものと見てよく、その結晶体から収穫のころに放たれる胞子は無数にある。
この胞子がむやみに散るのを防ぎ、ほどよく炙り詰めると、よい香りを放ち、美しい色つやが現れる。
ところが、そもそもこれは天日乾燥ではできない。日光の直射する力は確かに強いが、一定の温度をもって持続する。
それに対して炭火は、強い熱を必要に応じて自由に与えることができる。
このような違いがあるため、天日乾燥では椎茸の持つ良さを十分に引き出すことは到底できない。
では、そのよくない点を挙げると次のようになる。
イ、天日乾燥には強い火力がないため、乾燥の途中で菌の大切な成分が少しずつ失われ、しだいに品質の悪化を招く。
ロ、しいたけ特有の香りや色つやを十分に出すことができない。また、形も縮んでしまい、見た目も悪くなる。
ハ、十分に乾いたように見えても、実際には多少の水分を常に含んでおり、完全な乾燥品にはなりにくい。
ニ、カビがつきやすく、保存性もきわめて低い。
ホ、見た目がたいへん悪くなり、味も劣るため、市場でも非常に嫌われる。
これらの欠点は、天日乾燥のあとでさらに火力乾燥をしても、決して回復させることはできない。ただ乾燥の程度が進むだけで、品質そのものは相変わらず劣ったままである。
たとえば、ある程度まで天日乾燥してから火力で仕上げたものを、最初から火力乾燥で仕上げたものと比べると、素人でもすぐ見分けがつくほど品質に悪い影響が出る。「天日乾燥も少しくらいならよいだろう」という考えは、きっぱり改めなければならない。
また、天日乾燥にすると目方が増えるという人もいる。しかし、これはまことに浅い考えである。
なるほど一見すると重く見えるが、それは中に残っている水分の分が加わっているからであり、本当にきちんと乾燥して仕上げた品として見れば、理屈のうえではかえって火力乾燥品より劣る。
したがって、重要な国産品としての価値と信用を守るためには、この天日乾燥法は絶対に避けなければならない。
大分県では、天日乾燥法をできるだけ防ぐために厳しい規定を設け、違反した者には相応の罰金を取るほど改善が進められているという。
二、火力乾燥の効用
現在奨励されている改良乾燥は、どれも合理的にできているため、火力の調節を自由に行うことができる。
そのため、適切な乾燥作業ができ、乾燥技術者がその技術を十分に発揮すれば、ほとんど完全に近い優良品を作ることができる。
では、火力乾燥のよい点を挙げると、次のようになる。
イ、火力は人の手で温度を自由に調節できるので、火加減によって菌の大切な成分が失われるのを防ぐことができる。
ロ、火加減を調節することで、椎茸の大事な三つの要素、つまり香り、色つや、形のよさを十分に引き出すことができる。
ハ、しっかり乾燥して仕上げることができるので、カビがつく余地がなく、長期間の保存にも耐えられる。
ニ、見た目がたいへんよくなり、香りも豊かで、山吹色、つまり黄金色の美しい仕上がりになり、多くの人に好まれる豊かな風味を得られる。
ホ、市場では常に高値がつき、売れ行きも非常によい。
もちろん、火力乾燥で上質な品に仕上げるには、努力も技術も必要であり、木炭などの資材もある程度必要になるが、その負担は販売価格の面で十分に報われやすい。
だから、目先の小さな利益にとらわれず、国産しいたけの品質向上という点から見ても、十分に慎重な態度で火力乾燥を重視しなければならない。
日本の椎茸生産の先進地である大分や宮崎の特産品は、この点にしっかり力を入れて、ますます改良と発展を進めてきたので、今では世界的にも高い評価を受けているのである。
「山の光」が書かれた昭和5年の椎茸栽培状況の記録はこちら↓
天日干しは消費地で行われる再乾燥の方法であるとお伝えしてきました。実は天日干しには大きなメリットがあります。それは紫外線に当たることで椎茸のエルゴステロールがビタミンDに変わる、ということです。
干し椎茸を自宅でさらにビタミンDたっぷりにするための天日干しの方法をご紹介します。
1.干し椎茸をザル等に重ならないように広げる。
2.傘の裏側のヒダを上に向けて日光に当てる。30分~3時間ほど必要に応じて、天日干ししてください。短時間でも効果がありますが、長時間当てるとそれだけ効果があります。紫外線予報が「強い6」以上だったら1時間の天日干しで十分です。 季節によって紫外線の量は異なりますので加減してください。吸湿した干し椎茸を乾燥させるときはカラカラに乾くまで天日干しします。
3. 強い日光に晒されると、干し椎茸の傘裏は白っぽく変色します。これは十分な紫外線が当たった証なので白くなれば天日干し完了です。
4.充分冷ましてから袋に入れて下さい。天日干し直後の熱を帯びた状態でポリ袋等に入れると袋の中で結露します。
以上のやり方で、ご家庭でも最高の天日干しを楽しむことができます。
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